清水寺に蝦夷(えみし)の首領【アテルイとモレ】の顕彰碑がある理由

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京都市東山区にある清水寺は、日本屈指の人気観光スポットとして知られています。清水の舞台や音羽の滝など、多くの見どころがある一方で、あまり知られていない歴史も存在します。

その一つが、蝦夷の英雄であるアテルイとモレの顕彰碑です。私が初めてこの碑を訪ねたとき、門番の方に場所を聞いたところ「あなたは何かされている人ですか?」と訪ねられました。おそらく一般の人がこの碑を目当てに清水寺に来ることはないのだろうと思います。

京都・清水寺に眠る蝦夷の英雄:アテルイとモレの顕彰碑

蝦夷の英雄:アテルイとモレ

アテルイとモレは、8世紀後半に活躍した蝦夷の指導者です。当時の朝廷は蝦夷征伐を繰り返していましたが、アテルイとモレは勇敢に戦い、朝廷軍を何度も撃退しました。しかし、最後は坂上田村麻呂率いる朝廷軍に投降し平安京に連れて行かれました。

田村麻呂はアテルイを蝦夷の統率のために活用しようと除名嘆願をしましたが、公卿たちの反対で河内国で処刑されました。

清水寺に建立された顕彰碑

1994年、京都遷都1200年を記念してアテルイとモレの戦いを伝えるため、出身地の岩手県人会によって清水寺に顕彰碑が建立されました。

関西岩手県人会は古くからアテルイとモレに深い敬意を抱いており、8世紀に朝廷軍の侵攻に対して故郷と民衆を勇敢に守った英雄として認識していました。彼らの不屈の精神と民衆への揺るぎない献身に感銘を受けた同会は、彼らの名を永遠に刻む碑を建立することで、彼らの遺志を継承しようと決意しました。

彼らの活動は、坂上田村麻呂ゆかりの寺院として知られる清水寺の賛同を得ました。坂上田村麻呂は、最終的にアテルイとモレを打ち負かした朝廷軍の将軍です。歴史的な経緯は複雑ですが、清水寺は蝦夷の指導者である彼らを称え、民衆への献身を讃えることの重要性を理解していました。

南円庭にあるこの碑は、アテルイとモレの強靭さと勇気の証です。それは、蝦夷の人々が自治と自決を求めて戦った際の苦難と犠牲を思い起こさせるものです。

関西岩手県人会が清水寺にこの碑を建立するに至った経緯は、アテルイとモレが単なる歴史上の人物ではなく、抵抗と故郷や民衆への揺るぎない献身の象徴であることを示しています。彼らの物語は時代を超えて語り継がれ、世代の人々に自らの遺産を尊重し、信念のために戦うよう促し続けています。

大阪府交野市にある「アテルイの首塚」: その理由と背景

大阪府交野市にある牧野公園には、「アテルイの首塚」と呼ばれる塚があります。しかし、この塚が実際にアテルイの首塚であるかどうかは、様々な議論があります。

アテルイの首塚が交野市にあるという伝承は、江戸時代から存在します。しかし、その根拠となる史料は残っていません。

これらのことから、「アテルイの首塚」は、史実ではなく、後世の人々によって作り上げられた伝承であると考えられています。

「アテルイの首塚」は、史実かどうかは別として、地域の人々にとって重要な文化遺産となっています。

毎年9月には、アテルイの命日である9月17日にちなんで、慰霊祭が行われています。また、地域の歴史や文化を学ぶ上で、貴重な資料となっています。

おすすめ小説【火怨】高橋克彦

小説「火怨」は、高橋克彦氏によって1997年に出版された長編歴史小説です。舞台は平安時代初期の東北地方。蝦夷(えみし)の英雄アテルイの生涯を描いた壮大な作品です。

物語のあらすじ

蝦夷の若きリーダーである阿弖流為(アテルイ)は、朝廷の圧迫に苦しむ民衆を救うため、立ち上がります。卓越した戦略とカリスマ性で朝廷軍を何度も撃退するアテルイは、蝦夷の英雄として人々に称賛されます。

しかし、朝廷は更なる大軍を派遣し、アテルイは壮絶な戦いを繰り広げます。仲間を失い、絶望の淵に立たされながらも、アテルイは決して諦めません。

そして、最後の戦いに挑むのです。

作品の特徴

  • 史実に基づいた緻密な描写: 火怨は、史実に基づいて綿密に考証された描写が特徴です。当時の政治情勢や文化、風習などが生き生きと描かれ、平安時代初期の東北地方にタイムスリップしたような感覚を味わえます。
  • アテルイの苦悩と葛藤: 作品では、単に英雄としてのアテルイだけでなく、一人の人間としての苦悩や葛藤も丁寧に描かれています。仲間との絆、家族との愛情、そして蝦夷の未来への責任感。アテルイの複雑な内面が繊細に表現されています。
  • 壮大なスケール: 火怨は、蝦夷と朝廷の壮大な戦いを描いたスケールの大きな作品です。数千人規模の戦闘シーンは迫力満点で、読者を圧倒します。
  • 人間ドラマ: 戦争の描写だけでなく、アテルイと仲間たちの友情や恋愛なども描かれ、人間ドラマとしても楽しめる作品です。

評価

火怨は、吉川英治文学賞を受賞するなど、高い評価を得ている作品です。歴史小説ファンだけでなく、多くの人々に愛されています。

アテルイという人物

アテルイは、蝦夷の歴史の中でも特に有名な人物です。朝廷軍と戦い、蝦夷の独立を守ろうとした英雄として知られています。

火怨は、アテルイという人物を多角的に描き、その魅力を存分に伝えています。

まとめ

火怨は、蝦夷の英雄アテルイの生涯を描いた、壮大で感動的な歴史小説です。歴史小説ファンはもちろん、アテルイという人物に興味がある人にもおすすめです。

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