カリバタ英雄墓地に眠るインドネシア独立のために戦った元日本兵たち

インドネシア
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2023年6月と2024年7月にインドネシア・ジャカルタを訪問した際にカリバタ英雄墓地を訪問しました。その時の体験をもとにしてインドネシアに英雄として葬られている日本に帰らなかった元日本兵について紹介します。

なお、記事中の墓地と墓標の写真は案内人の許可を得て撮影しています。

カリバタ英雄墓地と眠る元日本兵

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はじめに

カリバタ英雄墓地は、インドネシアの首都ジャカルタ郊外のカリバタ地区にある国立墓地です。インドネシア独立戦争に参加した英雄たちが眠り、そこには28柱の元日本兵も埋葬されています。

本記事では、カリバタ英雄墓地の歴史と、そこに眠る元日本兵について詳しく解説します。

カリバタ英雄墓地の歴史

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カリバタ英雄墓地は、1945年のインドネシア独立宣言直後に、オランダ植民地時代の軍人墓地を改修して作られました。独立戦争に参加した英雄たちの遺骨が埋葬され、インドネシアの独立と自由を守るために戦った人々を称える場所となりました。

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インドネシア独立戦争

インドネシア独立戦争は、1945年8月17日にインドネシアが独立を宣言したのに対し、オランダが植民地支配を継続しようと戦争を仕掛けることで始まりました。戦争は4年に及び、最終的に1949年12月27日にオランダがインドネシアの独立を承認することで終結しました。

眠る元日本兵

戦後、一部の元日本兵は、インドネシア独立運動に共感し、武器や軍事知識を提供したり、ゲリラ戦に参加したりして、インドネシア独立軍を支援しました。彼らは「残留日本兵」と呼ばれています。

残留日本兵の数は諸説ありますが、約1,000人から2,000人と推定されています。彼らは、インドネシア各地に散らばり、様々な形で独立運動に関与しました。

代表的な残留日本兵としては、以下の様な人物がいます。

  • 杉山長幹 (すぎたやま ながよし): 元陸軍少尉。インドネシア独立軍でゲリラ部隊を指揮し、多くの戦果を挙げました。戦後もインドネシアに残留し、インドネシア軍の顧問を務めました。
  • 小野盛 (おの もり): 元陸軍曹長。杉山部隊の副隊長として活躍しました。戦後もインドネシアに残留し、インドネシア国籍を取得しました。
  • 山野五郎 (やまの ごろう): 元陸軍上等兵。ゲリラ戦で勇名を馳せ、「インドネシアの虎」と呼ばれました。戦後もインドネシアに残留し、インドネシア軍の軍人となりました。
山野五郎元上等兵の墓標

残留日本兵は、インドネシア独立戦争において重要な役割を果たしました。彼らは、軍事的な知識や経験を活かして独立軍を指導し、士気を高めました。また、インドネシアの人々と共に生活することで、相互理解を深め、友情を築きました。

インドネシア独立戦争終結後、多くの残留日本兵は帰国しました。しかし、中にはインドネシアに残留し、そのままインドネシア国籍を取得した人も少なくありませんでした。

インドネシア政府は、残留日本兵の貢献を高く評価し、独立戦争の英雄として顕彰しています。カリバタ英雄墓地には、28柱の元日本兵が埋葬されています。

カリバタ英雄墓地に眠る元日本兵は、インドネシア独立戦争に参加した旧日本軍兵士です。彼らは、戦後もインドネシアに残留し、独立運動を支援したり、現地の人々と共に生活を送ったりしていました。

1970年代になると、元日本兵の遺骨を日本へ帰還させる運動が活発化しました。しかし、インドネシア政府は、元日本兵も独立戦争に参加した英雄として尊重すべきであるとの立場をとり、帰還運動は成功しませんでした。

現在、カリバタ英雄墓地は、インドネシアの人々にとって重要な歴史的・文化的な場所となっています。毎年多くのインドネシア人が訪れ、独立戦争の英雄たちに敬意を表しています。

また、墓地には元日本兵の慰霊碑もあり、日インドネシア間の友好関係の象徴となっています。

近年では、インドネシア独立戦争における残留日本兵の活躍が、ようやく日本でも注目され始めています。彼らに関する書籍や映画も出版・制作されています。

インドネシア独立戦争と参戦した日本人について、より詳しく知りたい場合は、以下の書籍やウェブサイトを参考にしてみてください。

インドネシア独立戦争 - Wikipedia

カリバタ英雄墓地を訪問した体験

2023年6月と2024年7月に2年連続でカリバタ英雄墓地を訪問しました。初回の2023年訪問時には、私はカリバタ英雄墓地についてまったく知りませんでした。

たまたま私がジャカルタ滞在中に天皇皇后両陛下がインドネシアにご訪問され、このカリバタ英雄墓地にも供花をされたという報道を見ました。調べたところジャカルタ中心部からも電車で行ける距離でしたので、両陛下ご訪問の3日後に同じ場所を訪問しました。

カリバタ英雄墓地は軍の施設で観光地や名所のようなものではありません。私のような一般の旅行者が訪問して中に入れるのかどうかもわかりませんでした。

門の守衛さんに日本人旅行者ですが中に入ることはできますかと聞いたところ、敷地の中の事務所まで案内してくれました。そこに詰めていた軍人さんに再度訪問したい旨を説明すると、パスポートを預かるということで1名の軍人さんに案内をしていただくことになりました。

案内の軍人さんは、広大な敷地に中から元日本兵の墓所を案内してくださいました。最後に慰霊碑を背景に写真を撮っていただき終了しました。

私1人のためにわざわざ案内をしていただけるとは思いもしなっかたのですが、これはほんの3日前に日本の両陛下が訪問されたばかりだから特別な措置なのかなと思ってお礼を言って帰りました。

そして1年後の20204年7月に再度訪問したところ、パスポートを預けて案内をしていただけることになりました。

これがいつでも誰にでもしているのかはわかりません。見たところ、日常的にこなされているという印象は受けませんでした。前年も遺族らしき人の参拝はありましたが、私のような旅行者は誰一人見かけませんでした。

最後に、日本人はたくさん来ていますかと聞いたところ、来ていないと言われていました。

最後に

インドネシア独立戦争に元日本兵が参戦して、戦後も残ってこの地で亡くなった方が大勢いることも知らない人が多いのかも知れません。

ジャカルタは観光地と言うより仕事や経由地として滞在する人が多いのかも知れませんが、ジャカルタには多くの日本人が滞在しているのは間違いないでしょう。もっとこのことが知られてもいいのでは無いかと思いました。

かく言う私も昨年までまったく知らなかったのですが、昨年の両陛下のご訪問があった後も日本人がほとんど来てないと言うのは残念です。観光地ではないし、来て騒ぐようなところでもありません。ですがジャカルタに滞在する機会があ流のなら、じゅうぶん日帰りができる場所ですので訪問してみるのもいいかも知れません。ただ、この墓地は国家の独立のために戦った方たちを英雄として顕彰する(讃える)ところです。日本人としてもこういう父祖がいらしてくれたおかげで現在があることを忘れないようにしたいものです。

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